毎朝近くの畑から、その日に使う野菜を収穫。 とれたての野菜の味がご馳走のレストラン

藍染教室に来てくれたお客さんへのもてなしで
提供していた「おむすびと汁物」から店に発展。

 畑に囲まれた土地を進むと藍染の垂れ幕がかかった日本家屋が見えてきます。「呂志」は、かつて養蚕に使われていた趣きのある農家を改装して作られたレストラン。以前、ご自宅で藍染教室を開いていたオーナーの高橋さんは、お昼時になると自分で炊いたおむすびと汁物を生徒さんにふるまっていたそうです。当時から、かまどで炊いたご飯がおいしいと評判で、「もっとほかにも作ってほしい」とリクエストが寄せられるように。1年後には、頼まれるままに、地元の梅を使ったスパゲティを作ったり、誕生会のためのケーキを焼いたり、そばがきを作ったりと、おむすび以外の料理も出すようになりました。地元の野菜をたくさん入れたカレーを出したときは、特に好評だったとか。こうして少しずつ、今のレストランの原型ができあがっていきました。

とれたての野菜のおいしさを味わってほしいから
その日に使う分を、その日の朝に収穫する。

 営業はランチのみで予約が必要。メニューはおまかせ食事の1種類。「どうして?」と思う人も多いでしょうが、理由はいたってシンプル。呂志のこだわりは「とれたての野菜を提供すること」ですから、すべての都合はその日の畑次第なのです。
 高橋さんは群馬で暮らすようになるまで、特に野菜が大好きというわけでもなかったそうです。むしろ「食事の主役は肉や魚。野菜は必要だから食べる添えもの」という意識だったとか。ところが結婚を機にこの土地に来て、「じぃちゃんの畑でとれた菜っ葉を初めて茹でて、食べたとき、とれたての野菜ってなんておいしいんだろう!と感動したんです」。食材がおいしければ、茹でて醤油を垂らすだけでも十分。本当の野菜の力に気づいたそのときから、高橋さんの、野菜への興味も深まっていきました。
 現在、呂志で出す野菜は、自身の畑から収穫しているほか、いくつかの契約農家からも仕入れています。「生産者さんによっても味が違うんです。地元にはとても研究熱心な農家さんもいて、その方がおいしいというものは本当においしい」。その信頼関係があるため、「大根が終わった」と言われた場合も、臨機応変にほかのものを仕入れることができるといいます。

必要に迫られた野菜づくりだったが、始めてみると
またひとつ、「つくる喜び」を実感するように。

 使いたいと考えている食材が契約農家の畑では作られていないこともときどきあり、自身も約100坪の畑を手掛けるようになった高橋さんですが、最初は家族から「農業なんてできないよ」と心配されながらのスタートだったそうです。確かにたいへんなことは多いけれども、畑仕事は発見の連続でした。
「朝、自宅からここに来る前に、畑に寄って野菜をとってくるんですが、例えばふきなんかは、とってすぐ調理したほうが、苦みが出ないんですよ。ほのかな甘みを感じます。里いもでも、じゃがいもでも、同じ品種でもとれたては、本当に味が違います」。
 今では、家族も少しずつ手伝ってくれるようになったそうで、「最近では、早朝から畑に行って何かの種を植え、芽が出てくるのを楽しみにしているみたいです。人間って変わるんですね」と笑顔で語ってくれました。
(レポート: t.mutou/2009-12-03)
埼玉県幸手市の農家レストラン「なごみ」
その昔、盛んだった養蚕農家の母屋をレストランとして利用。外の幕は店主が染めたもの。
群馬県の農家レストラン「呂志」
昼寝をしていく人もいるという、ゆったりした店内。知人の職人が作った作品も販売。
群馬県の農家レストラン「呂志」
朝摘み野菜を使ったランチは。地場で採れた野菜と果物をふんだんに使用している。
群馬県の農家レストラン「呂志」
時代を感じる調度品は養蚕農家時代から使われていたものも多い。のれんは店主が染めた柿渋染。
群馬県の農家レストラン「呂志」
2階は藍染め教室兼、ギャラリー。この教室の生徒さんに出していたおにぎりがレストラン開業の切っ掛け。