素材の旨みと甘みが際立つ料理の数々。 その秘密は「重ね煮」という調理法

開業準備中に身体を壊し、入院、手術。
食の本来あるべき姿に気づき、めざす方向性が固まった。

 オーナーの関さんが「身体に安全で、おいしい料理を提供したい」と、田園が広がるのどかな立地に「なごみ」をオープンしたのは2005年。レストランの開業を夢見て具体的に準備を進めていたものの、体調を崩して入院するというアクシデントを乗り越えてのことでした。
このときの体調不良の原因が添加物を含む食べものにあるようだと気づいた関さんは、食の安全の重要性を痛感。次第に自然食への興味が深まるようになっていきました。やがて「重ね煮」という調理法を知ったときには「まさにこれだ!」と開眼。その名の通り、鍋の底から素材を層のように重ねて煮込む料理の仕方です。さまざまなレシピの下準備をひとつの鍋でできる便利な調理方法で、塩だけで素材のうまみと甘みを引き出せます。岡山で重ね煮料理を提唱する民宿「わら」に身を寄せて1ヶ月間の研修を受け、「調理法だけでなく、食に対する考え方、生き方まで教わりました」。その後、九州各地で有機農業や自然養鶏も学び、開業にこぎつけることとなりました。

順風満帆とはいかなかった数年間を経て
今では遠方からの客も訪れる人気店に。

 関さんの実家は埼玉で7代続く兼業農家。そのため食材は主に両親が作った米と野菜を使用し、そのほかの食材についても、身体と大地(自然)は切っても切れない関係という考え方(=身土不二)に基づいて、できる限り近隣の農家から仕入れています。
自分たちの手で建てる段階から関わり、たくさんの思いを胸にオープンしたレストランですが、なかなかお客さんが集まらず、数年間は苦労の連続だったとか。周囲には添加物を使わないレストランなどほとんどなく、すべてにこだわっているために原価が高くなってしまうこともなかなか納得してもらえませんでした。
どうすればよくなるんだろう……。スタッフみんなで考えて、さまざまな試行錯誤を重ねました。外観は、温かみのある山小屋風に。内装は女性に喜ばれるようなかわいらしい雰囲気に。店の看板は世界中どこから来たお客さんでも読めるようローマ字に。そして盛り付けも、見て楽しくなるよう盛りだくさんで華やかな印象に。小さなことからひとつずつ見直していった結果、やがて口コミで評判は広がり、今では九州や東北、さらに今年は遠く海外からもお客さんが「なごみ」の料理を楽しみに訪れるなど、店はようやく軌道に乗るようになりました。

「安全でおいしい料理」を家庭でも味わって
もらえるよう、料理教室も定期的に開催。

 「普通に出されている食事で支障がない方であれば、それがダメということにはならないと思います。私はたまたま添加物を受け付けない身体だったから、こうした自然食を提供しているだけなんです」と関さん。あれはダメ、これもダメ、という排除の考え方ばかりでは疲れてしまうし、続かないので、自分に合った食事の方法を選ぶことが大切、と語ります。
また、「身体によい食べ物や調理法を知ってしまった以上は、それを広く伝えていくのが自分たちの責任」と考え、店では定期的に、重ね煮の料理教室も開催しているそうです。「自分がここでおいしいと感じたら、家族にもそれを食べさせてほしい。そして、食べ物をはじめすべてのものに感謝をし、楽しく生活をすることを大切にしていただきたいのです」。その言葉のひとつひとつに、経験し、身体の変化を実感したからこその力強さがありました。
(レポート: t.mutou/2009-11-27)
埼玉県幸手市の農家レストラン「なごみ」
家族みんなで建てた店舗は、オープン当初から改良を重ね現在の形になったとのこと。
埼玉県幸手市の農家レストラン「なごみ」
山小屋風の店内は土足禁止。各テーブルに生花が飾られるなど、手作り感でいっぱい。
埼玉県幸手市の農家レストラン「なごみ」
素材のひとつ一つの味をしっかり感じる「シェフの気まぐれランチ/1,580円」。
埼玉県幸手市の農家レストラン「なごみ」
ヨーグルトを使わずにチーズ風味を出している、なごみ風ティラミス(写真手前)。
埼玉県幸手市の農家レストラン「なごみ」
身体を壊したことがきっかけとなり、現在の調理法にめぐり合ったという店主の関さん。