「ここきち」食材辞典

8月の旬の食材 なす

露地栽培のなすの収穫期は夏から秋にかけて。太陽の光をたっぷり浴びたなすほどおいしいと言われています。
なす
旬
露地栽培のなすの旬は6月~9月。高温と多湿を好み夏から秋にかけて成長します。成長期の日当たりがなすの品質を左右するので、晴天の多い年はおいしいなすが育つと言われています。冬から春にかけてはハウス栽培のなすが出回るので、一年中味わうことができます。
生産地
丸なす、卵形なす、長なす、米なすなど、日本で1200年の歴史を持つなすの品種は多種多様。かつては、九州から東北までの多くの地域で地方固有の品種が栽培されていましたが、近年では色が良くて育てやすい長卵形の雑種が全国の多くの地域で栽培されています。
  • 「奈良時代から栽培されている伝統野菜で、その種類はなんと170種類以上。
     インド東部原産のなすは、有史以前から人々に親しまれていたと言われています。中国に伝来し日本に入ってきたのは、およそ1200年前。なすに関する最古の記録は、東大寺正倉院文書にあり、天平勝宝2年(750年)6月21日になすが献上されたと記されています。その後、室町時代には、なすは京都周辺の特産品となって、江戸時代には全国各地で固有の品種が生まれ、その土地土地特有のなすが育てられるようになりました。その頃の農業全書には、なすの苗の育て方や栽培方法が詳しく書かれていて、紫、白、青の3色があるという記述があります。ちなみに、「なす」の名は宮中の女房言葉から由来したものだと言われ、当初は「奈須比(なすび)」とよばれていたようです。
     近年、関東を中心に一番多く流通していたのは、卵形なすとも呼ばれる千成なすです。一方、関西や四国で人気なのは煮物に最適な長なす。その他、賀茂なすに代表される丸なすや、アメリカから伝わって日本で品種改良された米なす、一口サイズの小さな小なす、長さ40cm以上にもなる大長なすなど、多彩な品種があるのもなすの特徴のひとつです。現在主流になっているのは、長なすと卵形なすの中間のサイズ、形の長卵形なすで、育てやすく多収穫で気候に左右されず栽培できることから、日本全国の多くの農家でつくられていますが、その一方で数多く存在した在来種が姿を消していっているのも事実です。
  • 「一富士二鷹三茄子」と言われるようになすは縁起のよい食べ物だと言われています。
     なすは日本に伝来した当初から高貴な人々だけが味わうことができる野菜として人気だったようです。江戸時代になってようやく庶民にも手の届く存在となりましたが、やはり高価な食材として珍重されていて、初なりのなすは高級食材として贈り物に使われていました。時の将軍、徳川家康は駿河名物で真ん丸い形をした折戸なすを好んで食し、お正月に献上されたなすを天ぷらにして食べたという記録も残っています。縁起のよい初夢として「一富士二鷹三茄子」と言いますが、これは、庶民にとって高嶺の花であるなすが初夢に登場するのは縁起が良いとされたからだ、という説があります。また、「なす=成す=成功する」という意味から、という説も。その他ある諸説の一つには、風景は富士山、趣味はタカ狩り、好物はなす、と徳川家康の好物を並べたという説もあります。
     また「秋なすは嫁に食わせるな」ということわざもありますが、これはお嫁さんに対する意地悪ではなく、なすは体を冷やす作用があるので涼しい秋に食べ過ぎて体を壊さないように、とお嫁さんへの気遣いから生まれた言葉。また、なすには種が少ないことから、子宝に恵まれないことを案じてできたことわざだと言われています。
  • なすには、夏の体にとっても優しい、うれしい成分が含まれています。
     なすの約95%は水分で主成分は糖質で、エネルギー量が低いヘルシー野菜として知られています。野菜の中では比較的カリウムを多く含有していて、ナトリウムとのバランスをとって塩分の摂りすぎを防ぎ、汗をかいたときの体内のミネラルバランスを整えてくれます。野菜は体を冷やす作用があると言われますが、特になすは生体調整機能に優れ、昔からのぼせや高血圧の人が食べると良いとされていますので、まさに夏に最適な野菜だといえます。
    皮の紫色をつくっているのは、ポリフェノール類であるナスニンとクロロゲン酸。ポリフェノールは、コレストロール値を下げ老化や発ガンを抑えるとも言われ、赤ワインに含まれることでも有名な成分です。ナスニンは眼精疲労の回復、褐色成分であるクロロゲン酸は血糖値や血圧の正常化に有効だということで、注目を集めています。
  • なすの保存は冷やしすぎに注意が必要です。ぬか漬けで食べると栄養がたっぷり。
     なすは高温多湿を好む植物なので乾燥に弱く、水分が蒸発すると鮮度を失ってしまいます。保存するときには、ひとつひとつをラップまたは新聞紙で包んでからビニール袋などに入れて密閉して冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。また野菜室の温度は5℃以下にならないように注意する必要があります。
    はりつやが良くみずみずしい紫色で、ガクの部分のトゲが鋭いもの、そしてどっしりとした重みがあるものを選ぶのがコツです。皮の色が薄いものは日照不足のなすです。多少曲がっていても味には影響はないでしょう。
     水分の多いなすは漬物に最適です。加熱の必要がない漬物は栄養面から言ってもおすすめの食し方で、なすをぬか漬けにした場合、生で食べるのに比べ、ビタミンB1やカリウムを2倍摂取することができます。